【第3章】家族への日常的ケアの指導

重障児は、日常生活の大半を寝たきりの状態で過ごし、緊張による発汗、流涎、排泄物などにより身体が汚染されやすく、清潔ケアは重要な援助の一つである。清拭や入浴は皮膚の清潔をはかるだけでなく、新陳代謝・血液の促進作用があり、温浴効果はリラックスにもつながる。以上のことから、在宅での清潔援助は異常の早期発見につとめ、安全・安楽な方法を選択し実施することが重要である。

清潔援助方法の選択
入浴・シャワー浴は児の呼吸状態が安定していることが重要である。普段の児の状態をよく把握し変化を見逃さないようにする。また、入浴やシャワー浴を行うときは人手を十分に確保し家族や訪問看護師などで行い安全・安楽に行うことが望ましい。
清潔ケアとしては、児の状態にあった援助方法を選択し、安定している状態なら毎日実施する。重障児は刺激により筋緊張が増強するため、清潔ケア時の心理的なアプローチが重要である。また、リラックスする雰囲気をつくりながらの清潔ケアが大切である。

入浴
浴室は濡れて滑りやすいため、危険物や障害物など整理整頓する。湯の温度は38℃~40℃に保ち、可能であれば室温の調整を行う。呼吸器装着児や呼吸状態が悪化しやすい児は呼吸器、吸引器、酸素吸入器、アンビューバッグを準備する。入浴中の嘔吐や低血糖を予防し、安定した状態で入浴ができるように食直後と空腹後は避ける。浴槽は児の発達に合わせて選択し、必要に応じて浴槽マットを使用する。入浴前に十分に吸引を行い気道分泌物を除去する。チューブ類(胃管・気管チューブとカフエアチューブ)は確実固定し、長いチューブ類は引っ掛からないように身体の一部に固定するなど工夫し、抜管予防に努める。自発呼吸がない児で用手換気を行いながら行う場合と呼吸器を装着したまま行う場合があり、後者は気管カニューレや呼吸器の蛇管がひっぱられ、事故抜管がないよう気をつけておこなう。人手があるときに2人以上で行うことが望ましい。気管切開を施行している児は、気切口に石鹸水がはいらないように保護する。変形や筋緊張が強い場合は四肢の皮膚の密着部位を無理に洗おうとせず、リラックスするまで待つ。入浴からあがるまでにベットに寝具を整え、替えの寝衣やオムツを用意しておく。

清拭・洗髪・部分浴
毎日の入浴は困難であるため、清拭は入浴日以外は毎日行う。長期間入浴することができない児には、ベット上にて洗髪、手浴、足浴、陰部洗浄等の部分浴を行う。空容器となったボトルを利用し温湯をいれて部分浴を行うとよい。呼吸が安楽な体位をとらせ変形や拘縮が強いときは無理な体位は避ける。緊張のある児は、無理に四肢の伸展や屈曲を行う骨折の恐れがあり、また、筋弛緩のある児は膝が倒れ打撲の危険があるため注意する。
実施後は皮膚の湿潤部分は十分に拭き取る。とくに指間は悪臭や皮膚トラブルの原因となりやすい。皮膚の乾燥の激しい部分はスキンローションなどで保護し、寝具、寝衣が濡れていないか確認する。

口腔ケア
重障児は口腔機能障害と抗痙攣剤の内服により,う歯・歯肉炎・歯肉増殖・口臭等の症状がみられるため口腔ケアは重要である。経口摂取している児は毎食後、経管栄養の場合も1日2~3回実施する。歯ブラシは児に合ったものを選ぶ。嚥下障害や嘔吐反射がある場合は吸引の準備をする。緊張や開口困難な児は無理な開口は避け自然に開口するときを待つ。
基本的にうがいはできないため、歯磨き粉は使用せず、水またはイソジンガーグル液を使用する。
ベット上で行う場合は側臥位、又は仰臥位とし必ず顔を横向きにする。舌苔はガーゼで軽く清拭し除去する。口腔ケア後乾燥予防にリップクリームや白色ワセリンを塗布する。

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