ケア指導の体系化

(文責: 長谷川 朝彦 埼玉医大総合医療センター小児科助教)

(1)長期計画の作成。退院予定の設定

  • a. 退院日を○月中旬と具体的に設定する
    医療的ケアの指導についてはもちろんのこと、在宅医療や福祉の手続き、物品の準備、バギーカーの作成や自宅の改装の期間等も考慮に入れて、退院日を設定する。
  • b.入院中に行うべき内容のリストアップ
    中心的に指導を行う医師、看護師が,指導内容,手続き,物品,具体的な項目を挙げる。必要ならばソーシャルワーカーを含めた他のコメディカルに意見を聞く。
  • c. 指導・物品準備の順番と到達期間の設定
    病棟でスタッフが直接指導して行うもの(日常的ケア、医療的ケア)、手続き、物品の準備に分けて進める。
    ケアについては、児に愛着を持ち、ケアになれて頂く為に、①日常的ケア(着替え、おむつ交換、体位変換)から指導を始め、十分慣れたところで、②医療的ケア(経管栄養の管理、気切部の処置等)の指導へと進む。そして、③保護者が付き添い入院する総合的ケアへとすすめてゆく。保護者の習得に余裕が出てきたところで、呼吸器の説明や緊急時の対応の指導、必要があればバックによる用手換気の指導を逐次入れてゆく。また、母親だけでなく父親に対しても、あるいは両親そろっての指導も行う。
    各種申請手続き、補助を受けてのバギーカー作成や機器の購入、自宅の改装などは、時間がかかるため、早めに準備を行うように指導する。入院中の指導でも用いる物品として聴診器などは、はじめの段階で購入してもらってよい。
  • d. 各指導内容での準備と指導者の分担
    それぞれの指導内容について説明と準備を行う人員を、医師、看護師、さらにはMEなどのコメディカルに割り振り、予定の日程にあわせて準備をする。担当スタッフ間で説明内容共有し、必要があれば説明内容の吟味を行う。

(2)指導開始時の説明

説明時のポイントは、次の通り。
  • a.具体的に行う内容を、具体的にすべてリストにして提示する。
  • b.量は多く、最初は戸惑うことも多いため、ケアの習得には時間がかかることを説明する。
  • c.しかし、ケアに慣れてゆくにしたがって、習得の時間が短くなってゆくので心配はないことを説明する。
  • d.福祉助成の申請手続きは、早めに準備するよう説明する。
  • e.子供の成長とともに親も成長していく喜びを、医療スタッフとともに共有することを伝える。

(3)指導中評価

入院を開始し、実際に指導してゆく中で、保護者の習得程度を把握してゆく。
例えば、1週~2週に1度、担当看護師と医師で30分程度のカンファレンスを行う。その時点で今後の予定の修正、問題点について話しあう。

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